特別展「日本美術をひも解く 皇室、美の玉手箱」

 東京藝術大学大学美術館へでかけた。

    台風が近づいているらしく晩夏の上野公園は湿り気のある風が吹いていた。開館に合わせて美術館へ向かう。

 後期の展示、伊藤若冲動植綵絵」10幅は花や蝶、川魚、そして鶏が繊細に描かれていて、いまその場所に生きているかのよう。なかでも好きだったのが片足立ちの一羽の雄鶏「向日葵雄鶏図」。同展チケットにも登場している。

  雄鶏は朝露で輝くように赤い鶏冠、白、茶、黒色の羽根に艶があり、まぶしくかっこいい。傍らの向日葵には朝顔のツルがからみ、ゆらゆら揺れているようだった。

 「動植綵絵」は江戸時代後期に伊藤若冲が約十年の歳月をかけて取り組んだ全30幅の作品群。30幅のすべてが皇居三の丸尚蔵館に収められ、2021年に国宝指定を受けた。250年以上前に描かれたとは思えないほど鮮やかな色彩である。十年かけて描いた若冲の情熱が伝わってきた。いきものたちの生命力がこちらに迫ってくるのだ。

 そのほか十二代酒井田柿右衛門白磁麒麟置物」、並河靖之「七宝花鳥図花瓶」などが展示され、作品を360度ひとまわりして鑑賞できる。細部まで手がほどこされ美しい。ため息が出る。さすが美の玉手箱である。

 若冲の作品に触れ日本の四季と自然美、いきものの愛らしさを堪能した。公開されていない他の動植綵絵20幅はいつかきっと再び私を驚かせてくれるだろう。